岡山天音「豆腐の入った桶に頭を突っ込んで死んだ春町の本を、桶に並べて売るという蔦重の発想は…」「最初に演出から伝えられたのは意外にも…」大河ドラマ『べらぼう』インタビュー江戸のメディア王として、日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築いた人物“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』。ドラマでは武士で戯作者の恋川春町<倉橋格>が老中・松平定信の怒りを買った結果、自ら命を絶つことに…。そこで今回、春町を演じた岡山天音さんにお話をうかがいました。(取材・文:婦人公論.jp編集部 吉岡宏)
【写真】春町は豆腐の入った桶に頭を突っ込んでその生涯を終えます。これほど人格が投影された死に様というのも、なかなか…。
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◆春町の死について
恋川春町が切腹する場面を収録するにあたって。
「明日いよいよ死ぬんだな」とか「ああ、今日が春町最期の日だ」としみじみ考えながら家を出た覚えがあります。そういった気持ちで収録に臨んだのは初めての経験でした。
それは「自分で選択して死を選ぶ」という形があってのことだと思うんですが、とても複雑な心境でしたね。
春町は豆腐の入った桶に頭を突っ込み、「豆腐の角に頭をぶつけて死ぬ」を再現して、その生涯を終えます。ドラマをご覧いただいた方には伝わったと思うのですが、これほど人格が投影された死に様というのも、なかなか…。
悲しさとユーモラスさを両立した死。そして限りなく創作的な人生の終わらせ方。
そんな状況、現実世界でなかなかないものと思いますので、役者として刺激の多い現場となりました。
なお“最期”の考え方について、現実の僕は春町と対極にあると思っていて。
生前にやってきたことに絡むことなく、むしろ解き放たれたところで生涯を終えるんじゃないかなって。春町のように、その肩書に伴う責任を背負いながら人生を終える、なんてことは、まずないんじゃないかな。
◆ブラックユーモア、だけど粋だなって
なお、春町が切腹する36回ですが、その回の台本を僕よりも朋誠堂喜三二役の尾美としのりさんのほうが先に読んでいらして、お会いした際に「読んだ?」って。「まだ読めていないんですよ」とこたえたら「ぐっときたよ…」と。
最後まで筋を通す春町の死に様というか、ただ単に腹を切るという形で終わらせないのが春町らしいなと感じました。
現実世界での死は、当人にとってはそこで終わってしまって、発展していきようがありませんが、大河ドラマの世界では、死の先も話が進んでいく。その意味で、春町が亡くなった後、仲間だった人たちによる弔い方には感情を強く揺り動かされました。
たとえば亡くなった後、蔦屋では春町の本を並べて売りだすっていう、今でいう<キャンペーン>を打ち出すわけです。そこでは蔦重のアイデアで、春町が豆腐の入った桶に顔を突っ込んで亡くなったことにちなみ、桶の中に著書を並べて売り出す。
それってある種のブラックユーモアじゃないですか? でも同時に粋だなって。
春町の「自分の人生を悲しいだけで終わらせないでくれよ」という思いに則って、実際に面白くしちゃおうよって。これが蔦重たちの弔い方なんだな、すごく素敵なお話だな、と感じました。
実は撮影の合間にその回を担当してくださった深川貴志監督から、その「弔い方」のアイデアを耳にして。天国から見ているような気持ちで感動した、といえばいいんでしょうか? 廊下でちょっと涙ぐんでしまいました(笑)。春町という人間について
春町の登場シーンは、対面した子どもに絵を描いてあげるところでした。
子どもを前にしたら、自然と笑顔になると思うんですけど、チーフ演出の大原さんから言われたアドバイスは「そういった感情の起伏はない方がいい」という意外なもの。
それで感情的にも不器用というか、繊細で、平均的な感情表現ができない人物を意識するようになりました。途中からは演じなくとも、自然とそうなっていったんですが。
春町は、とにかく生きづらさを抱えていた人だったのではないでしょうか。それでいて、最初から最後まで、一貫して生きづらいままの人生を歩んだのだと思います。
僕自身が春町と同一の存在というわけではないので、かりそめではあるかもしれないけれど、「人間社会の中で生きていくのが苦しい」という思いの片鱗を、常に出すようにしていました。それでいてある種の美しさというか、チャーミングさのようなものも、はたから見て感じてもらえるよう、意識して演じさせていただきました。
不器用だっただけに、彼は戯作に出会えてよかったんじゃないかな?
僕もヘンな人間ですから、役者になっていなかったら大変なことになっていたかも、とたまに思います。だからといって春町に特別なシンパシーを感じるかと聞かれれば…どうなんですかね?
僕の場合、どんな役も等距離で演じている感覚があって、どの役にも一定のシンパシーは感じています。その意味で、どの役も自分と似ていて、どの役も自分とは似ていません。
ただ春町のことは大好きで。自分の中でも、大切な役になったのは事実です。
(『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』/(c)NHK)
◆横浜流星と蔦重
ドラマの座長・横浜流星さんは、ひょうひょうとした印象がありながら、収録に入った途端、重厚な演技をする。その切り替えはある種、尋常じゃないほど。
大河ドラマの主演である以上、セリフ量は膨大。それでいて何十話分を行き来しながら収録しているので、他のドラマや映画の撮影現場では試されないようなところにまで向き合うことになります。
その苦労を全く感じさせないんですよね。
かかわる演出担当の数も他作品より多く、それぞれのスタイルがある中、それぞれからの「こう表現してほしい」といったオーダーをフレキシブルに受け止めて。それでいて“蔦重”という大きな幹を作っていくわけです。
しかも様々な共演者の方と、カメラが回っていないところでまでちゃんとコミュニケーションをしているのが、すごくかっこいいなと。
年下ですが、本当に頼りになる存在。横浜さんと蔦重がどっしりと存在してくれていることで、僕も春町としてその世界に飛び込みやすいなって、いつも感じていました。#japan #trending #news #trendingvideo #viralvideo #viral #jpop #kpop
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